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うすゆきしょう

うすゆき抄

久生 十蘭

「オール讀物」1952(昭和27)年1月号~3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,454 字 · 59 页

青空文庫

乱破のうちでも風摩ノ衆はとりわけ義理が固く、受けただけのものは無理をしても返すという風である。仲間の一人が江州、塩津の土着人に打ち殺されたというので、百戸からある村を八方から焼きたて、人も馬も逃さばこそ、一夜のうちに灰にしてしまったことがあった。諏訪、上原の合戦では、糧道の先達に道を教えなかったら、村端へ煙硝を仕掛け、一郡七カ村を跡方もなく噴き飛ばしてしまった。

先達をまごつかせたくらいでそうだから、大将を殺したとなっては、災害のほども思い知られる。道長などは、引裂かれるか、串刺しにされるか、焙られるか、煮られるか、いずれは乱離骨灰、それも道長だけですむことか、おのれ、資子、行子、一門一族、血につながるものは、堺から、山城から、紀州から、一人残らず根こそぎに探しだされ、目もあてられぬ始末になってしまう。円明の占兆にあらわれたのは、つまりはこのことだったのだろう。どんなお先ッ走りの心霊が、こんな細かいところまで見抜いてしまうのか知らないが、非業の死とはよく言いあてたと、いっそ感心するくらいのものだった。

当の道長は落着いたもので、そんなにご心配なさるな、たいしたことはないものです。