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うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
「オール讀物」1952(昭和27)年1月号~3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,454 字 · 59 页
戦争の目的が気に入り、この大将ならと思うと、どちらの側へでも加担する。もちろん扶持は受けるが、その合戦かぎりのことで、どういう場合でも主従の関係は結ばない。これは乱破の一般の気風でもあるのだが、主従の関係ができて妙な重味がつき、恩愛の絆に縛られて自由を失うのを極度に嫌うのである。
大炊介の父は大体そういった人物だった。大炊介が五歳になると、手許から離して小田原の青山新七という儒家へ預け、成年に達すると、小田原、入谷津の山曲で年五十石の上りのある田地を買って小さな家を建て、大炊介を一人でそこに住まわせ、「生涯、俺の子であることを口外してはならぬ、青山大炊介と名乗っておけ」と申しわたした。
なんのために、そうまでして親子の関係を厳秘しようとしたのかわからないが、しかし、想像できないことはない。戦場における乱破の主な任務は、敵の後方を攪乱することにあって、村を焼いたり、敵産を掠奪したりするが、それを必要の程度にとめておくことはむずかしい。それどころか、大抵の場合、目をおどろかすような大掠奪になり、意外な血を流してしまうのが常なのであって、そのため思わぬところで深い怨みを受けている。