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おさくのはなし
おさくの話
小川 未明
「教育研究」1929(昭和4)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,508 字 · 9 页
「もったいないことする人は、ばかですわ。」といって、あちらへ去りました。
二人の少年は、たちまち顔の色が、変わりました。
「ばかだといったな!」と、兄が立ち上がった。
「生意気だね、お母さんに、いいつけておやりよ。」と、弟も、つづいて立ち上がると、もう風船球のことなどは忘れて、二人は、廊下を駈けて、彼女のいった後を追いました。
日ごろは、女中に対して、やさしい、いい奥さまでしたけれど、この日ばかりは、怖ろしい奥さまに見えました。そして、厳格な言葉つきで、
「おまえが、ほんとうに、坊ちゃんたちに、ばかだなんて、失礼なことをいったなら、悪かったといって、おあやまりなさい。」といわれました。
おさくは、うつむいて、目にいっぱい涙をたたえていました。けれど、どうしても、すなおに、自分が悪かったといって、わびる気になれないものがありました。
「自分のいったことは、まちがっていたろうか?」……彼女は、こんなことを頭の中で考えていました。
「悪いと思ったら、はやく、あやまるものですよ。」と、奥さまが、つづけさまに、やや大きな声でいわれた。
このとき、おさくの目に、哀れな自分の母が下を向いて、熱心に、風船球を内職に張っている姿が浮かびました。