轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おさん

おさん

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1961(昭和36)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,128 字 · 66 页

青空文庫

「おいちょっと待ってくれ、話してえことがあるんだ」

参太は立停って振向いた。作次は喘ぎながら近よって来た。すると、すぐ右手のほうで「おじちゃん危ねえ」と伊三の叫ぶ声がし、作次が参太におそいかかった。参太の眼にはその動作が、枯木でも倒れるようにぎごちなく、ひどく緩慢なものに見えたが、実際には非常にすばしこく、無意識にひょいと身を捻るとたん、作次の手が参太の半纒を引き裂き、その肩が激しくぶち当って来た。参太はその力に打たれてよろめき、よろめいたまま横へとんだ。そのとき、作次の顔へ小石がばらばらと投げつけられ、「おじちゃん逃げなよ」と伊三の叫ぶのが聞えた。作次は左手で小石をよけながら右手をあげた。その手に出刃庖丁があるのを見、投げるつもりだと直感した参太は、すばやく身を跼めながら走りだした。いまか、いまかと、背中へ庖丁の突き刺さるのを予期しながら、雨戸を閉めた家並の暗い軒下づたいに、彼は夢中で走った。うしろで二度ばかり、作次の喚き声がし、相当に距離ができたとわかったが、それでもなおけんめいに走り続けた。

「ばかなやつだ」と走りながら参太は呟いた、「なんて哀れなやつだろう」