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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页
「ねえ、おじさん。すまないが書いてくれないか。」
いい年をして大の男が甘ったれた口つきをして云うのである。おじさんはそういう私の顔を見て、苦りきった顔をする。
「駄目だねえ、君は。自分で書きねえ。書きねえ。」
私は甘ったれた人間の常として、おじさんの苦りきった顔つきのなかにも、なお私に対する多分の好意が籠っているのを抜け目なく見てとって、すかさずそこにつけ込むのである。
「そんなことを云わずに書いてくれよ。頼むよ。」
「なぜ自分で書かないんだ。」
「だって、面倒くさいんだもの。」
チェッとおじさんは舌打ちをするが、もう半分以上私の頼みを容れる気になっている。
「しょうがねえな。出しねえ。出しねえ。」
とおじさんは云う。おじさんは、それに傚って私に代って台帳に記入するところの原本を出しねえと云っているのである。私は待っていましたとばかり、先月の定数台帳をおじさんの目の前にひろげる。それのところどころには今月から新規に購読するようになったお得意の名前が書き入れてあり、また先月までで購読をやめたお得意の名前の上には墨で棒が引いてある。
「この通りに写せばいいんだね。