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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页
そこは日頃の誼しみがあるから、悪くは云わねえよ。うまく云っといたよ。松葉屋にお馴染がいるなんてことは伏せておいた。」
その夜私は寝床のなかに這入っても、なにやら胸騒ぎがして、なかなか寝つかれなかった。親に見込まれたという話よりは、やはり娘に見染められたという話の方が身に染みた。自分がこうしてねっからうだつが上がらないのに、おめおめと生きながらえているのは一体なんのためだろうなどと、そんな日頃あまり考えつけないことを考えたりした。やはりなにかを待っているのだろう。なにかを待っているとすれば、そのなにかとはなんだろう。やはりそれはどこやらの内気な娘から、実はというその人の本心を一言ききたいことではないかしらと思ったら、私はなんだか胸がいっぱいになってきた。一体どこの娘だろう。そんないまどき流行らない恋煩いをしている娘というのは。
けれども、この話はそれっきりであった。その後なんの音沙汰もなかった。つまり破談ということになったのだろう。シンデレラは心がけのいい娘であった。だから奇蹟が実現したのだ。私は叩けばいくらでも埃の出る男である。おじさんはうまく云い繕ってくれたとしても、よそから這入った情報が芳しくなかったに違いない。