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おじさんのはなし

おじさんの話

小山 清

「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页

青空文庫

住居の方もある牛乳屋の二階にお情けで置いてもらっている状態であった。

その後またしばらくおじさんの許を尋ねなかった。するとある日、めずらしくおじさんから私のもとに葉書が来た。見ると、就職ならびに転居の知らせであった。

「目に青葉山ほととぎす初かつおの季節に相成りました。元気でご活躍のことと思います。その節は一方ならぬご配慮にあずかり忝く存じます。この度当寺院に住込みました。健康も至極良好でありますからご安心下さい。おひまの折りに是非一度ご光来下さるようお待ち申します。谷中○○寺内、野辺地礼次郎、追伸、五重塔を目じるしにお出になりその辺にてお尋ねになればすぐわかります。」

右のような文面であった。私はまずなにはともあれほっとした。この文面から察すると、新しい環境はおじさんにとって快適なものであるらしく、おじさんはまったく満足しているように見受けられた。この葉書は私に友人の近況をこの目で見届けたい心を起こさせた。私は早速谷中まで出かけて行った。省線日暮里駅で下りて、五重塔を目あてにして歩いていき、とある花屋で訊くとすぐわかった。この辺は関東の大地震の災害をも、また戦災をも免れていて、一体の家並はひどく古めかしかった。