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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页
私はいっそ羨ましい気がした。窓からは涼しいほどの風が吹いてくる。窓の向うには初夏の光を浴びた木立も涼しげな、この寺の墓地が見える。私は小家を出て墓地の中を歩いた。私がおじさんのために墓誌銘を考案したのは、この散策の最中に於いてである。私が頭の中でどうやら墓誌銘を仕上げたとき、風に送られてまた琴の音がきこえてきた。つづいて歌声もきこえてきた。
いとしのこがらがさ
きょうもとおれかし
やさしのこがらがさ
きょうもとおれかし
私はきき惚れた。私がまた小家に戻って、所在なさに机に向い手習いをはじめていると、娘さんがお茶を持ってきてくれた。
「どうも、お待たせしてすみません。妹が今年からこの先の幼稚園にあがりまして、それでおじさんに送り迎えをしてもらっているんです。もう戻ると思います。」
「おじさんはいつからこちらに御世話になっているんですか。」
「まだ一月ほどですわ。」
「僕はおじさんからまだなにもきいていないんですが、どういう御縁からですか。」
「私共で前から仕事を頼んでいる大工さんからおじさんの話をききまして、ちょうど私共でも人手が欲しかったもんですから。」
「おじさん体はどうですか。