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おみな

おみな

坂口 安吾

「作品 第六巻第十二号」1935(昭和10)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,437 字 · 11 页

青空文庫

子供の感傷に絡み合う自らの虚しい感傷が、なんとしてもひたすら面倒くさいものに思われていたから。

私は子供のことなんかそれっきり考えてもみない。女も全く考えていない。それからの数日、私達は一向語り合うこともなく、ただなんとなく茫然と暮していたが、決して正当に通じ合うことはあるまい二人の男女の心に、ある懐しい悲しさが通い、そして二人は安らかであったと述べても、それは子供の訪れのセンチメンタルな出来事にはゆかりのない別のことだ。愛し合うことは騙し合うことよりもよっぽど悲痛な騙し合いだ。そのこと自体がもう大変な悲しさではないのか!

そのこと自体が悲しさだと? 言わしておけばつけあがり思いきった神がかりの凄文句をぬかす奴だが、そこで、と貴殿はひらきなおり、そのセンチメンタルな情景を、さてまた何の魂胆あって書いたんだと仰有るか? なんのことだ、そのこと自体の悲しさもないもので、一ぱし大人の口をきいてもそれがもう即ち馬脚の正体で、御神託の「悲しさ」ももはやお里が知れきっている。今更口をつねってもそのセンチメンタルなペーソスが結局お前の悲しさなんだと、こう仰有る。