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おくみさんとそのしゅうい

お久美さんと其の周囲

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页

青空文庫

、第3水準1-91-24)子の心はすっかりその一語一語に引き込まれて仕舞ってどんな事があってもお久美さんの云う事に塵程の間違いもない様に思えた。

自分の云う丈の事を話すとお久美さんは、あんまり遅くなるとよくないからと帰り仕度をし始めた。

「もう少し位居たって大丈夫よ。

まだ十分位ほかなりゃあしない。

と※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子が止めても、

「だめよ、一寸先生の所へ来た次手によったんですもの。

と振り切る様にして又元の雨落ちの所から下へ下りた。

割合に何でもない様に気持悪く汚れた平ったい下駄を又履いたお久美さんは、裾をつまみあげて体に合わせては小さ過ぎる傘を右手に持つと、

「あさってね。

と云うなり内輪にさくりさくりと芝を踏んで拡がってある無花果の樹かげから生垣の外へ行って仕舞った。

※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子はお久美さんが居なくなってかなりの時がたつまで、何だかそわそわした誰かがどっかから隙見をして居るのを知りながら見出せない様な気持で居た。

三

お久美さんはちっとも奇麗な人ではなかったし勿論不幸な生活をして居るのだから※(「くさかんむり/惠」