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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
な音をたてて打いたりしながら云い訳に苦しんで居る橋本の金の事を考えて居た。
自分の傍に引きつけて坐らせてある恭の方を時々見ながら、
「彼那に止めるのも聞かずに使って仕舞って、一体どうする積りなんだろう。
使う時は勝手に使っといて、後の仕末はいつでも私にさせるものだと思ってる。
さかさに立ったって今すぐ彼れ丈のものが右から左へ出るものではなし、若し彼の家で他の人でも頼んだら皆ばれて仕舞うのに、何て呑気な人なんだろう。
アーメンどころじゃあ有りはしない。
お関は、忌々しい様に落着いた様な調子で、
「神の我々を恵ませ給う事は……
と云って居る主人を上目で睨んで居た。
※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子が来てから不安がって居た問題が又お関の心に鮮やかに成って来て、毎日の様に別に之と云う考えもなく、苦しまぎれに、
「どうかするから、
お前なんか介わんで置け。
と云う主人をつかまえては腹をたてて居た。
訴えられでも仕様ものなら大事になる危い金まで使って、村長に成ろうとか何とか騒ぎたてて、揚句のはてに来たものは前よりも多い借金の証文と悪口であるだけでもむしゃくしゃするのに、橋本の金の事まで思うと、余り意地が焼けて一素の事首でも括ってやれとまで思って居た。