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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
「ええ。
と返事をして、自分達の部屋に来てから始めて落着いた気持になって、今度来ると云う養子の事を考えた。
養子が来る。
お久美さんは直覚的に或る事を悟った。
にわかに世の中が明るく成った様な、自分の体が延びた様な歓びがお久美さんの心を領して、薄暗い灯の下で、白い布に包まれた自分の成熟した体を、喩え様の無い愛しみを以て眺めて居た。
どんな人だろう。
目の前には今まで見た若者の顔のすべてが現れ出て、朧気ながら髪の厚い輝やかしい面が微笑を湛えて見えたり隠れたりした。
其の晩、お久美さんは今まで有った事の無い幼児の様に安らかな明けの日の楽しい眠りに陥ちた。
九時過の汽車に山田夫婦を送り出してから、お久美さんは、珍らしく※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子を訪ねた。
その前の日に漸う床を離れた許りで、まだ頭の奥が重い様な気持で、何事も手に就かないで居た※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子は意外なお久美さんの声に驚きもし喜びもして、年に似合わしい浴衣を軽く着て、髪等もまとまりよく結ったふだんとはまるで人の違う様な姿を楽しそうな眼差しでながめやった。