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おひめさまとこじきのおんな
お姫さまと乞食の女
小川 未明
「童話」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,692 字 · 16 页
」と、おいさめ申しましたが、お姫さまは、どうかわたしの希望をかなえさせておくれ、きっとその恩は返すからといって、ついに、女の乞食に姿をやつされました。そして、城を立ちいでられることになりました。
門番が見つけたら、またひと災難であろうと、お姫さまは心配をなされましたが、門番はこのときまで、まだいい心地に居眠りをしていましたので、乞食のふうをした若い女が、自分の前を忍び足で通り過ぎたのをまったく知らなかったのであります。
お姫さまは、往来の上に出られました。その道を歩いてゆくと、どこまでも道はつづいています。そして、ゆきつきるということがありませんでした。お城の内は、いくら広くても、一日の中には、まわりつくしてしまうことができますのに、往来はどこまでいっても、はてしがなかったのです。そればかりでない、青々とした野原や、花の咲く圃などを右に左に見ることができました。緑色の空は、円やかに頭の上に懸かって、遠く地平線のかなたへ垂れ下がっています。春風は、遠くから吹いて、遠くへ去っていきます。百姓が愉快そうに働いています。お姫さまは、なにを見ても珍しく、心も、身ものびのびとなされました。