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おじぎ

お時儀

芥川 竜之介

作家保吉被一阵气味唤起记忆,多年前在避暑地车站偶遇一位穿银灰色洋服的小姐。那段朦胧的邂逅,至今仍让他心头一颤。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,067 字 · 9 页

青空文庫

しかし毎日汽車になど乗れば、一ダズンくらいの顔馴染みはたちまちの内に出来てしまう。お嬢さんもその中の一人である。けれども午後には七草から三月の二十何日かまで、一度も遇ったと云う記憶はない。午前もお嬢さんの乗る汽車は保吉には縁のない上り列車である。

お嬢さんは十六か十七であろう。いつも銀鼠の洋服に銀鼠の帽子をかぶっている。背はむしろ低い方かも知れない。けれども見たところはすらりとしている。殊に脚は、――やはり銀鼠の靴下に踵の高い靴をはいた脚は鹿の脚のようにすらりとしている。顔は美人と云うほどではない。しかし、――保吉はまだ東西を論ぜず、近代の小説の女主人公に無条件の美人を見たことはない。作者は女性の描写になると、たいてい「彼女は美人ではない。しかし……」とか何とか断っている。按ずるに無条件の美人を認めるのは近代人の面目に関るらしい。だから保吉もこのお嬢さんに「しかし」と云う条件を加えるのである。――念のためにもう一度繰り返すと、顔は美人と云うほどではない。しかしちょいと鼻の先の上った、愛敬の多い円顔である。

お嬢さんは騒がしい人ごみの中にぼんやり立っていることがある。