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おちゃのゆまんぷくだん
お茶の湯満腹談
夢野 久作
「文芸通信」1935(昭和10)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,250 字 · 5 页
先頭の頼うだ御方の背広に耄碌頭巾と調子を合わせたものであろう。まさかスパイ戦術を使ったものではあるまいがと感心した序に少々気味悪くもなった。
家は普通の百姓家を、モウ一つ凝って更に百姓家らしく造作したもの。縁側に木綿車と砧が置いて在る。庭はなくて、全部手入れの届いた野菜畑である。ホーレン草、キャベツなぞ。入口に架けた翁瓦の笑顔が主人公の益田男爵にソックリである。
土間は真中に新しい黒い藁灰を入れて巨大な堅炭が三角の井桁に重なり合ったまま起っている。煤けた天井からは勿論、真黒な自在鍵、周囲に縄や茣蓙張りの椅子なぞ。見まわせば見まわす程、どこまで凝ってあるかわからない。成る程と思わせずには置かない茶人の拷問道具ばかりらしい。
座敷に上るとやはり万事が同じ調子で出来ている。炉の縁から自在鍵。シンシンと鳴る茶釜。古い手桶の火鉢。ヒネクレた瀬戸物の灰落しまで、何が何やらわからなくて仕合わせ。一々鑑定が出来たら肝を潰すであろう。頼うだ御方はしきりに質問しては感心して御座るが、その説明を聞いても格別わからないのだから少々情ないような気にもなった。
「イヤ。この頃の西洋人の日本研究と来たらトテモ大したものでげすよ。