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かたいおおきなて

かたい大きな手

小川 未明

「銀河」1948(昭和23)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,886 字 · 8 页

青空文庫

」

「ばかっ。」と、おじいさんは、きゅうにむずかしい顔をして、おこりました。なにも、しかられる理由は、ないと思ったけれど、それきり、勇吉は、だまってしまいました。

二人は、西日のさす、かわいて、白くなった往来をいきました。ほどなく、あちらの水色の空へ、えんとつから、黒い煙が、もくら、もくらと、のぼるのが見えました。

「おじいさん、まだ、お湯屋は、あいていませんよ。」と、勇吉は、立ちどまりました。

「どうしてか。」

おじいさんもいっしょに立ちどまって、そちらを見たが、とつぜん、

「あれは、なにか。」と、さもびっくりしたような、顔をしました。道の上に、手ぬぐいをかぶった、ひげつらの男と、大きな洗面器をかかえたものと、かたちんばのげたをはいた子どもなど、ひとりとして、まんぞくのふうをしない、人たちが集まっていました。それはちょうど、ルンペンどもが、通行人を待ちぶせしているようにも見えるからです。おじいさんが、おどろくのも、むりはありませんでした。

「なんでもないんだよ。戸のあくのを待っているのだ。」と、勇吉は、説明しました。しかし、おじいさんには、どうしても、のみこめませんでした。