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くろがねてんぐ

くろがね天狗

海野 十三

「逓信協会雑誌」1936(昭和11)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,616 字 · 18 页

青空文庫

「くろがね天狗、出てこい!」

そういって命令すると、精神が電波のように空間を走って、洞の中に安置されている所謂くろがね天狗の手足を動かすのだった。脳の働きは一種の人造電波を起こして空間を飛び、そして人造電波の受信機に外ならぬ機械人間くろがね天狗を自由自在に操縦するのであった。これが半之丞が五ヶ年の山籠りを懸けて作り上げた秘作機械だった。――南蛮鉄の胴体に、黒装束に黒頭巾を蔽った機械人間がコトリコトリと音を立てて出て来た。

「さあ、出発だ!」

半之丞は機械人間の脊に飛びのった。すると機械人間は彼の一念に随って走りだした。ヒューヒューと風を切って、暗澹たる甲州街道を江戸の方へ向って飛ぶように走っていった。

死闘

やがて二刻ちかくたって、半之丞とくろがね天狗の現れたのは、江戸の東を流るる大川に架けられた両国橋の袂だった。十日あまりの月が、西空から墜ちんばかりだった。あたりは湖の底のように静かで、行人の気配もない。

「ちぇッ。今夜もあぶれるか」

半之丞は舌打をした。

「人間の匂いさえしない。……」

といったが、横網寄りの商家の屋根の上から、チョコンと出ている一つの首には気がつかなかった。