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けしのはたけ
けしの圃
小川 未明
「赤い鳥」1920(大正9)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,337 字 · 11 页
「おまえには、母親なんかないのだ。」と、父親は答えました。
「そんなら、私のお母さんは、死んでしまったの?」
「うるさいってことよ。ああ、そうだ。死んだんだよ。」と、父親はどなりました。
子供は、付き場がなく、小さな胸をわななかせて黙ってしまうのでありました。
村や、町を歩きまわって、たくさんお金をもらってきたときは、父親は機嫌がようございましたけれど、もし、少なかったときは、口先をとがらして、
「やい、この盲目め、これんばかり働いてきてどうするんだ。ここらあたりへ捨てていってしまうぞ。」とどなりました。そして、小太郎の差し出した手から、お金をひったくるように奪い取るのでありました。
小太郎は、すが目でありました。自分にもあまり覚えのない時分に、どうして片方の目をつぶしてしまったのかわかりません。
あるとき、こんなことがありました。それはなんでも北の方で、青い海の見える町でありました。町といっても家数の少ない小さなさびしい町で、魚問屋や、呉服屋や、荒物屋や、いろんな商店がありましたが、いちばん魚問屋が多くあって、町全体が魚臭い空気に包まれていました。その町の木賃宿に泊まったときに、父親は、子供を、知らぬ男と女の前に出して、なにかいっていました。