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ことのしんじつ

ことの真実

宮本 百合子

「婦人公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,470 字 · 15 页

青空文庫

二・二六事件の秘史というものが、当時の内部関係者であったファシスト軍人によって主観的に合理化してかかれたものが公表されるし、日本海軍潰滅前後の物語も、当時の連合艦隊参謀長というような人々によって執筆されはじめた。

これらの記録には、どれにも共通な一つの本質がある。それは元連合艦隊参謀長草鹿龍之介氏「運命の海戦」(文芸春秋、四九・一〇に発表)をよんでもわかるとおり、「ミッドウェイ洋上、五分間の手遅れが太平洋全海戦の運命を決した※(感嘆符二つ、1-8-75)」と五分早かったらという調子で、海戦の状況がこまかく専門的に記されていることである。元海軍中将であるこの筆者は、その達筆な戦記のなかにきわめて効果的に自然に「しからばこのときどうすることがよかったか。結果論のようではあるが私は戦闘機なしでも出すべきであったと思う」と、さながら戦況の不利を目の前に見ているように「何という無念!」という感情で語りすすめている。読者は、専門家の生々した話しぶりにひきいれられ、スリルを刺戟され、われ知らず筆者の感情の流れにひきいれられている。そのようなミッドウェイの敗北をひきおこした戦争の本質について、元参謀長は歴史的な考察と反省を行おうとしていないのである。