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このころのこうたいしでんか
この頃の皇太子殿下
小泉 信三
「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,512 字 · 9 页
自分は生れからも、環境からも、世間の事情に迂く、人に対する思いやりの足りない心配がある。どうしても人情に通じて、そういう深い思いやりのある人に助けてもらわなければならぬ。
それは二、三年前のことであった。正田美智子嬢とのご婚約の定まった今、私はしきりにその時のことを思う。
顧みると、殿下のご婚約は、幾年来人々の待ち望んだところであった。殿下の師ヴァイニング夫人が日本を去ったのは、八年前の一九五〇年の暮であったが、夫人の滞在中、吾々(夫人と私)はすでに東宮妃たるべき淑女の資格について語り合ったことが夫人の著「皇太子の窓」の一章に記されている。ある日、夫人は私と語り、いう。皇太子妃たるべき方は、容姿がすぐれていなければならぬ、知性に富んでいなければならぬ、気力がしっかりしていなければならぬ、ユーモアを解する人であって欲しい、云々と。それに対して私はこういったという。「理論上全然同感です。ただ、その人の名を指して下さい。」「マケマシタ」と私(夫人)はいった。それは日本語で「まいった」という意味である。そうしてわれわれ二人は大笑いした。
とある。
それは八年前の会話であるが、殿下のご婚約が定まったので、私は夫人に、正田美智子嬢こそ正しくあの時君が列挙した条件を、すべて備えた淑女だと、いい送ろうとしているところ