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さかずきのりんね

さかずきの輪廻

小川 未明

「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页

青空文庫

若い、派手やかな装いをした女たちが、なまめかしいはやし声で山車を引くと、山車の上の自分のおじいさんは、ゆらゆらと赤い顔をして揺られました。

おじいさんは、にこやかに、街の中のようすを笑いながらながめていました。そして、山車の下を通る車や、仰向いてゆく人々に、いちいち会釈をするように、くびを振っていました。

山車の上のおじいさんは、両側の店をのぞくように、そして、その繁昌を祝うように、にこにこして見下ろしました。やがて、山車は一軒の骨董店の前を通りました。その店にはガラスだなの中に、利助のさかずきが、他の珍しい物品といっしょに陳列されているのでした。

山車の上のおじいさんは、その前にくると、一段、くびを前後に振りましたが、やがて、若い女のはやし声とともに、その前をも空しく通り越してしまいました。

後には、ただ、永久に、青い空の色が澄んでいました。そして、たなの中には、ねずみを描いた、金粉の光の淡い利助のさかずきが、どんよりとした光線の中にまどろんでいるのでした。

こうして、たがいに遇うたものは、また永久に別れてしまいました。いつまた、おじいさんと利助のさかずきと孫とが、相見るときがあるでありましょうか。