轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さかずきのりんね

さかずきの輪廻

小川 未明

「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页

青空文庫

きっと、世間の人は、利助という名人をまだ知らないからだろう。これに描いてあるねずみの絵はどうだ? この藍の冴えていて、いまにも匂いそうなこと、金色の――ちょうの翅を彩った、ただ一点ではあるが、――溶けそうに、赤みのある光を含んでいること、ほんとうに、驚くばかりだ。」

彼は、さかずきを手に取ったまま、ぼんやりとしていました。街の暮れ方となりました。さまざまの物売りの呼び声がきこえてきたり、また人々の往来の足音がしげくなって、あたりは一時はざわめいてきました。こうして、やがては、しっとりとした、静かな夜にうつるのでした。

彼は、この黄昏方に、じっとさかずきを手に取って、見入りながら、利助というような名人が百年前の昔、この世の中に存在していたことについて、とりとめのない空想から、夢を見るような気持ちがしたのです。

彼は、うれしさをとおりこして、あるさびしさをすら感じました。そして、夜、燈火の下に膳を据えて、毎晩のように酌む徳利の酒を、その夜は、利助のさかずきに、うつしてみたのです。

「まあ、これを見い。ねずみが浮いて、いまにも飛び出しそうだ。」

彼は、家内のものを呼んで、利助の作ったさかずきの中をのぞかせました。