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さまざまなおいたち
さまざまな生い立ち
小川 未明
「教育新潮」1928(昭和3)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,959 字 · 6 页
なんという白く、清らかな花であろう。そしてなつかしい香を、たたえているであろう。
小鳥が、どこかで鳴いていました。ようやく浅緑の芽をふいた木立は、喜ばしげに踊っていました。空を仰ぐと雲が流れています。春には、ちがいなかったけれど、なんというさびしい春であろうと思った。
「お父さん、早く、東京のお家へ帰りましょう……。」と、弟はいいました。
「なぜ?」
「さびしいんですもの……。」
このとき、お父さんは、自分の子供の時分のことをいろいろと話されたのでした。このさびしい春も、北国の人々には、どんなにか一年のうちで楽しいときであるかしれない。そして、長い、暗い、冬からぬけ出て、花の咲いた野原や、青々とした丘を見ることは、どんなにうれしいことであるかしれないといわれたのでした。
子供たちは、お父さんが、小さな時分、この野原で駆けまわって、遊んだ姿などをいろいろに想像しました。そして、いい記念にと、すずらんの花を持って帰ったのでした。
兄と弟は、毎日、庭へ出て、すずらんの咲くのを楽しみに待ったのです。ほかの草は、ぐんぐんと芽を伸ばして大きくなりました。また、ほかの木立は、いつのまにか、美しい花を開きました。