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しかしむかしにはかえらない
しかし昔にはかえらない
宮本 百合子
「新日本文学」1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,077 字 · 14 页
戦時中、大軍需会社の下うけをやっていて、小金をためたような小企業家が、さて、敗戦と同時に、何か別途に金をふやす方法をさがした。軍部関係で闇に流れた莫大な紙があった。戦後、続出した新興出版事業者は、ほとんど例外なしに、この敗戦おきみやげたる紙の操作によって出発した。これらの事実については火野葦平のみならず、軍と「民間」との消息に通じた多くの人がもとより無智であろうはずはなかった。
まったく、「バクロウが牛の掘り出しものでもさがすように」新人が売り出された。現代文学の素質は戦後になってから戦時中の荒廃をとりもどすどころか、実名小説にまで低下して来た。一九三三年に石坂洋次郎が、左翼への戯画としてかいた「麦死なず」と、一九五〇年に三好十郎が書いた「ストリップ・ショウ・殺意」とを見くらべれば、現代文学の傾斜が明瞭にわかる。そして、この「殺意」と「三木清における人間の研究」「たぬき退治」とは、それのかかれる精神の状況において連関がある。このような作品は、決して民主的な精神が率直に評価されている時代には書かれもしないしジャーナリズムが買いもしない。
文学に関心をもつすべての人々は、こんにちの日本文学の多くがこれでも文学であろうかという疑いを抱いている。