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しんぱくのはなし
しんぱくの話
小川 未明
「民政」1933(昭和8)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,076 字 · 7 页
星の光は急に、遠くなって、また銀河の色は、見えるか見えぬほどのかすかさです。
「自分の生活は、変わってしまったのだ。あの岩から引き離されたときは、枯れると思ったのがこうして生きるばかりでなく、あのあらしから、吹雪から、もう、まったく安心なのだ。なんという人間は、神以上の力を持っていることだろう。」
しんぱくは、人間を偉いと思いました。ここへくる人たちは、だれでも、この鉢植えの前に足をとめて、感心して、ながめました。
「いい、しんぱくですな。」
木は、みんなが、自分をほめてくれるのでうれしく思いました。いわつばめや、こうもりなどに、愛されるよりは、人間にほめられるほうが、うれしいような気がしたのです。
「命がけで、自分を山からつれてきて、かわいがってくれるのだからな。」
こう、木は思うと、また、いつか雲が、
「山に育って、下界へいったものは、みんな死んでしまう。だから、霧と、あらしと、雪の中の暮らしを恨んではならない。なんといっても、それが貴くて、輝かしいのだから。」といったことが、愚かしく感じられました。
ある日、りっぱな紳士が令嬢をつれて、この庭園へはいってきました。