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すりかえかいが

すり替え怪画

海野 十三

烏啼天駆シリーズ・5

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,746 字 · 26 页

青空文庫

「聞きましょう、君の話を。犯人の素性その他について、聴取しましょう」

伯爵はややがっかりしたが、やがて思い直して探偵にそういった。

「これは私でなくては図星を指す者は居ないのでございますが、この犯人は、かの憎むべき奇賊烏啼天駆の仕業でございます」

「なに、ウテイ・テンクとは何者です。それが色白の女賊の名ですか」

「いえ、違います。二人組の男の方が、烏啼天駆なんで。こ奴は、すこぶる変った賊でございまして、変った物ばかり盗んで行くのです。建物から一夜のうちに時計台を盗んでいったり、科学博物館から剥製の河馬の首を盗んでいったり、また大いに変ったところでは、恋敵の男から彼の心臓を盗んでいったりいたしました」

「残酷なことをする。憎むべき殺人鬼だな」

「いや、殺人はいたしませぬ」

「しかし恋敵の男から心臓を抜けば彼は死んでしまう」

「ところが奇賊烏啼の堅持する憲法としまして“およそ盗む者は、被害者に代償を支払わざるべからず。掏摸といえども、財布を掏ったらそのポケットにチョコレートでも入れて来るべし”てなことを主張して居りまする奇賊――いや憎むべき大泥坊でございます。そんなわけで、こちらの御盗難の場合においても、代償として別の画をはめていったものでありまして、稀に見る義理堅い――いや、憎みても余りある怪々賊であります」