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そのさくはひつようか
その柵は必要か
宮本 百合子
「新日本文学」1949(昭和24)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,783 字 · 30 页
また同じことの別のあらわれとして、ある作品の民主的文学としての本質を理解し得ない働く人が、題材からだけみて、その世界は私たちの世界でない、と否定することまでしかできない場合、批評家がそのままその意見に追随して、だから働くものの文学は働くものの手で、と外から激励するだけでも、労働者階級の文学が育ってゆくことはできない。「どういう風に生きてゆくか」という実生活の課題を文学にもうつして、「どういう文学か」ということを追求し、ぎんみし、学んで自分からも作ってゆく民主的文学の自主的発展の能力がつよく、みずみずしくつちかわれてゆかなければならないのである。
吉川英治は、なぜ「太閤記」「三国志」「親鸞」「宮本武蔵」というような題材ばかりを選ぶだろうか。それは封建時代の昔から、「百姓、町人」の間にききつたえられ、語りつたえられているテーマだからである。「太閤記」は古く日本につたわっている。芝居もある。猿面冠者の立身物語は、そのような立身をすることのない封建治下の人民に、人間的あこがれをよびさますよすがであった。自分の生涯にはない、境遇からの脱出の物語だった。太閤記と云う名をきいただけで、日本の庶民の伝承のうちにめをさます予備感情がある。