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そのみなもと
その源
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社、1980(昭和55)年6月20日初版発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,973 字 · 4 页
人々は、苦々しさをもって、其をきかされていたのであった。
東京に進駐軍が来てから二ヵ月余り経った。連合国軍の進駐前、外国兵を人間でない者のように、只恐怖、憎悪すべきもののように教えていたのは、主として日本の軍関係の仕業であった。実際に接触してみると、大多数の人々は、教え込まれていた影像とは全く違った社会生活の訓練と、人間同士のつき合かたの明るさとにおどろかされた。豊かに物をもっている人に対する社会人としての習慣的な畏敬めいた気分も我知らず加って、進駐軍は、好評をもってみられていると云えるであろう。
ところが、そのような進駐軍の明るさが、そのまま曇りない明朗さとして、日本人の感情に影響しているかと云えば、其は必ずしもそうではない。
甘すぎるチョコレート話のあった翌日の夕刻、用があって又別の郊外電車にのった。買出しの大荷を背負った人々、勤めがえりの群集のつめこまれたその電車に、進駐軍の若い兵士二人が二人の若い日本の娘をつれて乗り合わせていた。娘たちはありふれた洋装であるが、ありふれないこととして盛にガムをかんでいる。兵士は二人ともラテン系のアメリカ人で、カールした髪が、帽子の下からはみ出ている。