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だしのとりかた

だしの取り方

北大路 魯山人

「星岡」1933(昭和8)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,471 字 · 5 页

青空文庫

かといって、この場合、料理屋の真似をしてガラスで削るのは危険だし、たくさん削る場合は間に合わないから、無理をしてかつおぶしを削ることになる。しかし、無理をすることは味が死ぬことになるのであるから、生きた味を出すためには、よく切れる鉋にかぎるのである。

鉋を持ってないひとがいたら、ここで一奮起して、大工の使用している鉋を購入するようお勧めしたい。大工の鉋一つ買うことは、値段からいっても高価ではないし、生涯なくなるものでもないのだから、不経済にはならない。要は研げないと頭からきめてかからずに、インチキ鉋の使用を一刻も早くやめる必要があろう。

さて昆布だしのことは、東京では一流の料理屋以外はあまり知らないようだ。これは、東京には昆布を使うという習慣が昔からなかったからだろう。昆布のだしは実に結構なものであって、魚の料理には昆布だしにかぎる。かつおぶしのだしでは魚の味が二つ重なるので、どうしても具合の悪いものが出来る。味のダブルということはくどいのである。昆布をだしに使う方法は、古来京都で考えられた。周知のごとく、京都は千年も続いた都であったから、実際上の必要に迫られて、北海道で産出される昆布を、はるかな京都という山の中で、昆布だしを取るまでに発達させたのである。