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でたらめきょう

でたらめ経

宇野 浩二

「伸びて行く 第六卷第一號」目黒書店、1925(大正14)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,418 字 · 11 页

青空文庫

が、泥棒のことですから、ふと、このおばあさんの家の前を通りかかると、戸が開け放しになっていて、目星いものはなさそうですが、「行きがけの駄賃だ」という考えで、一と稼ぎしようと思いました。のぞいて見ますと、中に一人のおばあさんが仏壇の前に坐っているだけで、外に人のいる気配がしません。そこで泥棒の甲が乙に、

「おい、お前、ここで張番をしていてくれ。こんな寂しいところだから、人の通りかかるようなことはないだろうが、もしこの家の者で外に出ている奴があって、そいつが帰って来たりするようなことがあると事だから。おれ一人で沢山だ、」といいました。

その時、家の中ではおばあさんが、昼間旅の人から習ったお経を始めるところでした。

「香炉や、花立や、花立や、香炉や……」

そこへ、泥棒の甲がそッとおばあさんに見えないように家の中に忍び込んで行きました。ところがびっくりしました。

「鼠が一疋御入来……」とおばあさんがいっています。人のことを鼠だというばかりでなく、見えるはずがないのに人が入って来たのが見えるのか知ら、と泥棒は思って、気味が悪くなったものですから一度表へ引返そうとしますと、おばあさんのお経はつづいて、