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とうげのちゃや
とうげの茶屋
小川 未明
「新児童文化 第2冊」1947(昭和22)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,035 字 · 12 页
」と、村の人はいいました。
そのとき、おじいさんは、あめ屋が、いい機嫌になって、子供の時分のことなどを話して、
「この西の方の山へ、子供のころ、きのこをとりにきたことがあった。」と、さもなつかしげに、あちらをながめて、あの山でなかったか、いや、もうすこしこちらの山であったとかいっていたのを思い出しました。酔っているので、しぜんと足が、その方へ向いたのかもしれぬと、そう、そのときのようすを村人に話すと、
「なるほど、そんなことかもしれぬ。多分そうだろうよ。いまどき、きつねにばかされるなんて、まったくばかげた、おかしな話だものな。」
その村人も、そういって、笑いました。
しかし、このきつねの話は、よほど誠しやかに、伝えられたものとみえ、その翌日だったか、村の助役が、茶屋へ入ってくると、
「おじいさん、わるいきつねが出て、人を騒がすそうだが、ここでは、なにも変わったことはないかね。」と、問いました。
おじいさんは、にこにこしながら、
「あめ屋さんが、ばかされたといいますが。」
「村の女どもも、町からの帰りに、ぶらさげてきた塩ざけをとられたといっている。なんでも、後からついてきて、さらったものらしい。