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とうげのちゃや
とうげの茶屋
小川 未明
「新児童文化 第2冊」1947(昭和22)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,035 字 · 12 页
「いま、話をきいて、すぐといっても、分別もつくまいから、おじいさん、よく考えておかっしゃい。」
そう、いいのこすと、助役は店を出ていきました。
おじいさんは、このころから、なにか新しい問題が、身に起こると、しきりに心細さを感じました。それは、年のせいかもしれません。そして、遠くはなれている一人の息子のことを思うのでした。いよいよ、いっしょになって、頼ろうかとも考えるのであります。
おじいさんは、客がいなくなって、ひとりになると、このあいだ、せがれがよこした、手紙を出して、見ていました。それにはそちらは、じき寒くなって雪が降りますが、こちらは冬もあたたかです。父上も、どうかこちらへいらして、親子いっしょにお暮らしくださいませんか。私どもも、まだ子供のないうちに孝行したいと思います、というようなことが書いてありました。たぶん、せがれが、工場の休み時間に書いたものとみえ、工場の用箋が使ってありました。おじいさんは、それらの文字ににじむ、親思いの情をうれしく、ありがたく感じ、手紙をいただくようにして、また仏壇のひきだしへしまいました。長年苦楽を共にした女房が、また、せがれにはやさしかった母が、いまは霊となって、ここにはいり、なにもかもじっと見ている気がして、おじいさんは花生けの水をかえ、かねをたたいて、つつましく