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とびよなけ

とびよ鳴け

小川 未明

「小学六年生」1940(昭和15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,471 字 · 12 页

青空文庫

「うしろへ乗らないか。」

辰一は、喜んで、徳蔵さんの背中につかまって、荷掛けに腰をかけ、足をぶらんと下げました。

「足を気をつけな。」

さびしい田舎道の方まで、自転車を走らせて、二人は、散歩しました。徳蔵さんは、辰一にとって、実の兄さんのような気がしました。

去年の暮れ、徳蔵さんに、召集令が下りました。辰一は、空が曇って、風の吹く日に、旗を振りながら、氏神さまへ送っていったことを忘れることができません。

「万歳! 万歳!」と叫びながら、どうか、めでたく凱旋してきてください。そのときは、また

こうして迎えに出るからと、ひとりでいったのでした。

徳蔵さんが、戦死されたという知らせがとどいたのは、ほたるの出はじめる夏のころでした。そして、それがじつに悲壮なものであったことは、このほど帰還した兵士の口からくわしく伝えられたのであります。その兵隊さんは、同じ部隊で、徳歳さんのことをよく知っていました。

出征の際は、○○駅から、徳蔵さんは、出発したのです。兵隊さんを乗せた汽車が通ると、国防婦人の制服を着た女たちは、線路のそばに並んで、旗を振りました。後れた女の人は、旗を振りながら、田圃道を走ってきました。