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どこかにいきながら
どこかに生きながら
小川 未明
「童話」1946(昭和21)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,469 字 · 9 页
少女が、また、パンをちぎって投げました。
「こんどは、あんたにあげるのよ。」
母ねこは、前に落ちたのを、はじめて、静かに口へ入れたのであります。
冬の間じゅう、二匹のねこは、このあたりの屋根をすみかとし、終日、日当たりをさがして、歩いていました。そのうち、春となるころには、子ねこは、もうだいぶ大きくなっていました。
町裏に、隣組の人々によって、耕された田圃がありました。そこには、黄色の菜の花が咲いていました。他の人には、気を許さなかった子ねこも、かわいがってくれる少女には、なつくようになりました。
そのころ、白い雲のあわただしく走る、空の下で、子ねこは、菜の花にとまろうとする、白い胡蝶を葉蔭にかくれて、ねらっていました。こうして、ふたたび、地上に降りても、いままでのように、母ねこは、後を追おうとせず、なるたけ離れて、気ままに遊ぶ子ねこを見守るというふうでありました。
「もう、じきひとりまえになるのだもの、私は、そうついて歩くまい。」と、いわぬばかりに、目を細くして、子ねこが、うまくちょうをとらえるかどうかと、ながめていました。
これを、またそばから見ていた少女は、子ねこのようすが、あまりかわいらしいので、足音をたてぬよう、うしろへまわり、いきなり抱き上げると、ほおずりをしました。