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どぶろくげんそう
どぶろく幻想
豊島 与志雄
「群像」1952(昭和27)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,452 字 · 21 页
俺は頷いた。
「わたしも逢いました。二度逢いました。」
煙草の煙で室内は濛々としていた。時間がとぎれとぎれに空白となった。
「それでは、出かけましょうか。」
「そう、出かけてもいいね。」
なんのことだかはっきりはしないが、それでも、よく分ってはいたのだ。まだいろいろ饒舌り、その言葉は空に消え、そして感じだけが残っていた。
周さんは立ち上って、奥の室にはいり、電燈をつけた。俺もついて行って、上り框から覗いた。
横手に、紫檀の大きな鏡台があった。その鏡の裏側から、周さんは小さな姫鏡台を取り出した。朱色に塗った玩具みたいなもので、どこかの土産物でもあろうか。それから、大鏡台の抽出を開けて、いろんな下らないものを取り出した。白粉やクリームの壜、化粧道具、櫛やピン、刷毛類など、たぶんもう使い古されたものばかりらしい。そして、そのうちの小さい物は姫鏡台の抽出に入れ、はいりきれない物は鏡の前に並べた。
周さんは俺の方を振り向いて、淋しげに頬笑んだ。俺は静かに頷いた。
周さんは有り合せの木箱を探して、姫鏡台とその他の品をつめこみ、上から紐で結えた。
それから周さんは、裏口の方へ行って、鶴嘴と平鍬を持って来た。