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なつかしまれたひと

なつかしまれた人

小川 未明

「童話」1926(大正15)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,245 字 · 11 页

青空文庫

「おまえは、どうして、そんなにおちぶれたい……。」といって、若者はため息をついたのです。

「いろいろ不幸がつづいてな。」

「息子さんは、どうしたい。」

「死んでしまった。」

「それは! おまえも不運なことだのう……。なぜ、また早く、町へ出てこなかったのだ。」

「町へ……。」

「これからゆくか? もう、おまえに、そんな元気がないか?」

「ああ、ゆく。」――若者は、あまりに変わりかたがひどいので、どうしようかと思いましたが、みんなにつれていって、おじいさんを見せてやりたいような気もしました。

このとき、あちらから、若い女と、子供らがこちらへ駈けてきました。

「おらのおじいさんを、どこへつれていかっしゃるつもりだ。」と、女は大きな声でいいました。

若者は、びっくりしました。

「町へ……。」

「町へ、なにしにさ。だれがたのんだい。」

「俺は、勘太じいさんと、町でいっしょに働いたものだ。」

女は、あきれたような顔つきをして、

「勘太じいさんなんて知らない。うちのおじいさんは、もうろくしているで、働けやしない。」

「じゃ、人違いか……。この着物はどうしたのだ。」と、若者はききました。