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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
文麻呂、左方へ消える。
翁の姿は蒼い残像をのこして、徐々に闇の中に消えて行った……風の音も、闇の中に吸い込まれるように消えて行った。……闇の静寂。どこからともなく、斧の音がひびき始めた。それは不気味なほど、はっきりしたひびきをもって、無明の時を刻み始めたのだ。
合唱(ごく低く)
無常の風に 春の陽の
常世の緑 吹き消えて
今ははや いずこの方か……
常世の緑 吹き消えて
翁が影は失せにけり
夜の深淵に 跡絶えて
翁が影は失せにけり
(斧の音)
あとにただ、……
ひびかうは 時の音の
ひびかうは 時の音の
無明に刻む 斧の音……
ただ、白銀の
無明に刻む 斧の音……
(斧の音)
わらべ達の声 (遠き挽歌のごとく)……さようなら! 文麻呂!……
ひびかうは 時の音の
ひびかうは 時の音の
無明に刻む 斧の音……
わらべ達の声 (消え入るように、遠く微かに……)さようなら! 文麻呂! さようなら! 文麻呂!……
緑色の薄紗が幾重にも垂れ下って行く。
〔溶暗〕
第二場
寺々の鐘の音
合唱
夕暮の 鐘の常無きひびき音に
鐘の常無きひびき音に
今ははや、……
いずこの方か 春の陽の
常世の緑 消え失せて