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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
お前を探して、竹の林の中をあてどもなくさまよい歩いていたんだ。……どこまで行ってもお前の家は見えて来なかった。どっちを向いても一面の竹の林だけなんだ!……僕は夢を見ていた。不吉な夢にうなされていた。いつかしらず、夜が来て、どこからともなくお前の声が聞えて来た。僕を呼んでいるお前の声が聞えて来た。……ああ、あれから一体どこをどう歩いて来たのだろう?……僕はただ、お前の声だけを信じていた。お前の呼び声だけを信じていた。だけど、もういいんだ。何もかも。……お前は僕の前にいる! 夢じゃないんだ!……(自分の旅姿を見せる)なよたけ! 御覧!……僕は都を棄てた。僕はもう二度と再び都へは帰らないんだ。……
なよたけ 文麻呂!……あたしも! あたしも竹の林を棄てたの! お父さんを棄てたの! わらべ達も棄てたの! 竹とあたしの間には、もう何もない。……あたしはたったひとり。……あたしにはもう帰って行く所もないわ。あんただけなの。あたしを幸せにしてくれる人は世の中に、文麻呂、あんたひとりしかいないのよ!
文麻呂 なよたけ! お前は信じてくれるだろ?……お前の清らかな魂を信じているのは世の中に僕ひとりだけだってこと。