轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
なよたけ 待って、文麻呂! あたしは駄目! あたしはやっぱり駄目なんだわ! あたしはこの竹の林の外へ出てはいけなかったんだわ!
文麻呂 (ぎょっとしたようになよたけの蒼白な顔をのぞきこむ……)
なよたけ (空けて行くように)……文麻呂!……誰かがあたしを呼んでいるの。声のない言葉で、……何かほの白い寒気のするようなものがあたしを呼んでいるの。……文麻呂! あたしには、何かしら逃れられない前の世からの契りがあったんだわ。それが今、蘇って来るの。眼に見えない雲のように、遠い前の世の物思いがだんだん蘇って来るの。あたしは、いつの頃か、この竹の林の中に生れた。世の中の事は何も知らずにこの竹の林の中で幸せに育って来た。……あたしはきっと竹の中でしか幸せになれなかったんだわ。竹の中でしか生きて行けない人間だったんだわ。この竹の林を見棄ててしまえばあたしは何だかもう生きて行くことさえ出来ないような気がするの。
文麻呂 (烈しく)なよたけ! 信じてはいけないよ! 僕以外の誰の言葉も信じてはいけないよ!
なよたけ (だんだんと独白ふうになって行く)あたし、初めてあんたに逢った時から、二人だけの幸福を夢みていたわ。