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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

文麻呂 田舎娘なのかい?

清原 竹籠作りの娘なんだ。年取った父親と二人暮しの貧しい少女さ。……まだ、まるで少女なんだ。汚れ多い浮世の風には一度だって触れたことのないような。……何て云うのかなあ、こう、まるで、……………

文麻呂 いくつ?

清原 え?

文麻呂 年さ。いくつ?

間――

清原 ……しらないんだ。

文麻呂 何だい。訊いてみないの?

清原 ……まだなんだ。

間――

文麻呂 いくつ位に見えるのさ?

清原 それが、……よくわからないんだ。

文麻呂 何だか少し頼りないね。……話したことはあるんだろ?

清原 (俯向いたまま、無言)

文麻呂 ね。毎晩逢って話ぐらいはするんだろ? え?

清原 (ごく低く)まだなんだ。

長い沈黙。

文麻呂 (しばらくは呆れたような顔をしていたが)そうか、……まあ、いいさ。……つまり、まだほんの「恋知り初めぬ」と云ったばかりの所なんだな。だけどね、清原、恋をするにはもう少し勇気を持たなくちゃ駄目だよ。もう少し思い切ってやらなくちゃ駄目さ。僕はそう思うな。この女こそ自分の一生を賭けた唯一無二の女性だと云う確信がついたら、早速、自分の心情を率直に打明けなけりゃ問題にならないよ。