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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

になってくれればいい。文麻呂は何か吾を忘れたもののように、じっと遠く竹林の方を見ている。……

やがてわらべ達の唄声が次第に遠く消えて行く頃、瓜生ノ衛門、右手より現れる。丘の上の人影をそっと窺うようにみている。

瓜生ノ衛門 (文麻呂だと分ると、低い声で)文麻呂様。……文麻呂様。………

文麻呂 (その声にふと我に返り、あたりを見廻すが、暗くてよく分らない。空耳かな、とも思う)

瓜生ノ衛門 お坊ちゃま。………ここですよ。こちらでございますよ。

文麻呂 誰だ!

瓜生ノ衛門 私でございます! 瓜生ノ衛門でございます。

文麻呂 なんだ、衛門か。……お前だったのか? びっくりさせるじゃないか、こんな処に……

瓜生ノ衛門 (笑いながら、近寄って行く)やっと見付けました。ずいぶん方々お探し申したんですよ。……お父上はもう?

文麻呂 (丘の上から下りて来る)む。行ってしまわれた。……元気に発って行かれた。

瓜生ノ衛門 東路はさぞ淋しゅうござりましょうな。……手前もお供致しとうございました。………でも、供奉のものはみな大伴様の御所存だったので、……残念ながら、……致し方ござりませぬ。

文麻呂 む。