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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

なよたけ 恐しいこと!……じゃ、みのり! お前はどんなことした?

みのり あたし、去年の冬、蓑虫を真裸にして、冷い雪の上に捨てちゃったの。

なよたけ 無慈悲なこと!……蝗麻呂! お前は?

蝗麻呂 僕、蝗をたくさんとって来て、片っ端からお醤油をつけて焼いて食べた。……

なよたけ まあ、むごたらしい!……そんなことをするから、後の世の人達が食べなくてもいいものまで食べるようになってしまうんだわ。……じゃ、こがねまる! お前は?

こがねまる (非常な躊躇)……おら、……おら、……

なよたけ いいから、云いなさい!

こがねまる おら、……いつだったか、お薬鑵の中に黄金虫を一杯つめ込んで、……お湯をかけて、焚火で沸かして、……「煎じ薬」だよってごまかして、胡蝶に飲ましちゃったイ。

胡蝶 (急に思い出して、火のついたようにおいおい泣き出す)

なよたけ 胡蝶! 泣かなくってもいいの! もうこがねまるはあんな悪いことは二度としないわね?

こがねまる (素直に)ん、……しない。

なよたけ 胡蝶! こがねまるはもうしませんって! さあ、胡蝶! お前は? お前はどんなことをしたんだっけ?

胡蝶 (涙を拭き拭き)……あたし……あたし、……蝶々の翅で、……髪かざりを作ったの。