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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
都の人達はみんな利己主義です。享楽主義です。自分の利慾しか考えない。自分の享楽しか考えない。みんな自己本位の狭隘なる世界に立籠っています。都は虚偽にみちみちています。真の道徳は地を払ってしまった。……自己の栄達のためには、どんな不道徳なことでもしかねません。他人の幸福のことなど、微塵も考えてくれやしません。あなたが都へ連れて行かれたら、それこそ不幸のどん底につき落されるのですよ。あなたは一生涯泣いて暮らさねばならなくなるのです。
こがねまるが戻って来た。二人の話を聞いている。
文麻呂 なよたけ。大納言は……絶対にまごころを持っているひとではありません。決して、あなたの美しいこころねの分るひとではありません。ただ、あなたのかおかたちの美しさに幻惑されて、あなたを騙そうとしているのです。あなたのこころが分るひとは自然のこころの分るひとだけです。自然のこころとは愛です。恵みです。あなたの心を知り得るひとは、この自然のこころを愛し得るひとだけです。自然のこころを愛し得るひととは詩人です。詩人だけは本当に美しい自然のこころを読むことが出来るのです。そして、なよたけ、……あなたの美しいこころも読むことが出来るのです。