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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
女5 (左より)それが、あなた、驚くじゃありませんか。今度の御相手はまだほんの十七、八のとんだ賤しい田舎娘なんですって!
女9 まああ!
女10 なんだ、そんなお噂なら、もうとうの昔に知ってるわ。……では、その大納言様の恋路を妨げる若いお方がひとりいらっしゃるってことは御存知?
女9 あら! 恋仇?……ねえ、教えて。……それは一体、どなた?
女10 ふふ。……(云わない)
女5 そう勿体振らないで、おっしゃい。
女9 ねえ。……おっしゃいよ。
女10 ……これは秘密よ。どなたにも饒舌っては駄目よ。(三人、顔を寄せ、右へ退場)
男9 (右より)何かと云っては、物忌物忌と口先ばかりはやかましく云っているようだが、こう云うものは、元来、いくら口うるさく云ってみたところで、それに心が伴わなければ何にもならない。まあ、我々のつけているこの葵の鬘や蘰にしてもだ、近頃ではまるで形式的になってしまって、みんな、何のことはない、祭りの飾りの一種だ位にしか考えていないようではないか。それでは何にもならない。……元来、この葵と云う花は、必ず太陽の方に向って咲く、云わば陽の花だ。それだからこそして、悪いやまいや怨霊を払う不思議な力があるのだ。