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はてしなきせかい
はてしなき世界
小川 未明
「童話」1923(大正12)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,675 字 · 10 页
この赤ちゃんは、いつしか日数をへて、かわいらしい坊ちゃんとなりました。
坊ちゃんは、もうそのころから、自分は、ただ一人であるというような、さびしさを感じたのであります。みんなから離れて、ぼんやりと道の上に立って遠くの雲をながめたり、また、空をはてしなく飛んでゆく鳥の影を見送ったりして、かんがえ込んでいるようなことが多うございました。
ある夏の日の晩方のことでありました。この感じ深い子供は道の上にたたずんで、いつものように頭の上を飛んでゆく鳥をながめていました。もうあたりはだんだんと暗くなりかけていました。けれど、鳥の飛んでゆくかなたの空だけは、明るい、なんとなくなつかしい色を、瞳に映じたのでありました。
「ああ私も鳥になりたい。そして、あっちの明るい国へ飛んでゆきたいものだ。」と、子供はいいました。
すると、どんなものに対しても注意深く、また耳ざとい鳥は下の方を向いて、すぐに子供を見つけて、そのいうことをすっかり聞いたのでありました。
「坊ちゃんは、私といっしょにあっちへゆきたいのですか。だけれど、それはできません。私のゆくところは、たいへんに遠いところなのであります。