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はととりんご

はととりんご

小川 未明

「日本の子供」1940(昭和15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,810 字 · 8 页

青空文庫

はははは、だまそうと思ったのだね。」と、正ちゃんが笑いました。

「じっとしているから、おねえさんに箱のふたをはずしてもらって、僕が、なぐってやろうとしたのだ。」

「なぐった。」

新吉は、ねえさんが注意しながら、ふたをはずしたのを思い出しました。そのとき、ねこはあまえるようにして、体をねえさんにこすりつけたので、自分は、振り上げた手をどうしようかと、ちょっとためらった瞬間に、ねこが矢のように逃げ出したので、はっと思って、すぐなぐったが、ただ、はげしく、ステッキが地面を打っただけでありました。

「打ちそこねて、おしいことをしたのさ。」

「だめだな、新ちゃんは、そんなの打てなくてどうするのだい。僕なら、きっと、たたき殺してやったのに。」

正二は、今度、仕合をしても、自分は、じゅうぶん勝てる、といわぬばかりの調子でありました。

「僕、あんなやさしいねこの姿を見なければ打てたのさ。」

日ごろ、犬やねこをかわいがる新吉は、まったく、そのとき、手もとがくるったのであります。

「だめだなあ、敵を討つとき、かわいそうもなんにもないだろう。」と、正二がいいました。正二のいったことは、たしかに、新吉を深く考えさせました。