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ひとわれをこうしきしゅぎしゃとよぶ
ひと吾を公式主義者と呼ぶ
戸坂 潤
「中央公論」1937(昭和12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,981 字 · 19 页
既成の言葉がアダ名となるのはやや微温的に過ぎるのであって、寧ろアダ名が自称となる位いでなくてはならぬ。「印象主義」の場合のようにだ。処で吾々は科学主義のレッテルを貼られても、之を自ら称すべく居直る必要などは認めない。吾々は自分を特徴づけるもっと由緒のある言葉に富んでいるからだ。文学主義で何が悪いか、俺は立派な文学主義者だ、などと居直らざるを得ないのが、処で文学主義者の方なのである。
さて公式主義呼ばわり主義者にとって、なぜ公式というものがそんなに恐ろしいか。公式というのは勿論科学公式のことだ。社交の公式や服装の公式のことではない。だから公式を一旦容認すれば、その背後につめかけている膨大な科学(自然科学ばかりでなく社会科学もである)の大群を容として迎えねばならぬ。科学は組織を有っている。恐るべきはこの組織なのだ。この組織はまるでソヴェート制度みたいなものだ。文化帝国の文学主義というキャピタリズムにとって、本能的に恐れを催させるものだ。なぜそれが悪いかという証明は一寸出来ない、ただ悪くなくては困るという結論が最初にあるのである。この憎悪は恐怖から生じる。