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びんのなかのせかい
びんの中の世界
小川 未明
「赤い鳥」1927(昭和2)年1月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,126 字 · 9 页
もうろくされたおじいさんは、このびんの中に見える男が、いつか、あの山を越えてくるのだと思われたのであろう、と考えました。
しかし、不思議なことは、二度めに、正坊がびんの口に目をつけて、空を見たときには、馬に乗った男の影が見えずに、赤い花の咲いた野原に、はるかに、町の姿が小さくなって見えたことです。
三度めに、彼が、そのびんからのぞいて、かなたを見たときには、前に見たような景色は見えなくて、茫々とした海原の中を、ただ一そうの船がゆく影が見えたのでした。そして、この三つの場面が、びんの口をのぞくたびに、そのときどきに入れ変わって見えるだけであって、他の景色は見えなかったのであります。ある日のこと、
「そう、そのびんを外へ持って出て、いつか壊すといけない。」と、おばあさんがいわれたのを、正坊は、わざと聞かぬふうをして外へ持って出ました。
彼は、往来の上に立って、それをのぞきながら、友だちがやってきたら友だちにものぞかせて自慢をしてやろうと思っていました。
このときどこからか、一人の男が、ほんとうに馬に乗ってやってきました。そして正坊を見ると、ふいに、馬を止めました。