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みのりをゆたかに

みのりを豊かに

宮本 百合子

「人民評論」1946(昭和21)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,827 字 · 8 页

青空文庫

事務室で、チリチリとベルが鳴り、係員がハアハア、ハアハア、と一種の玄人らしさで返事している、あのデンワで、この多忙、繁雑、非能率な国鉄運営の難事業を処理しているのではないだろうか。

各種の軍事施設は、おそらく優秀なラジオをもっていたろうと思われる。憲兵隊のようなところも、同様であったに違いない。そこにあったラジオの設備を、せめて運輸事務の改善のために活用することは出来ないものなのだろうか。そして、食糧の輸送に一つの強味を加えることは出来ないものだろうか。

各地の警察連絡にはラジオが利用されるが、鉄道にはそれが利用しようともされていないというのが、今日でも、日本の現状であるのだろうか。

わたしは全波のラジオが早く聴きたい。破産しても支払えないほどの金を払わないでも、聴けるように日本の生産技術が進んで欲しいと思う。

ラジオただ一つをとってさえ、わたしたちの今日の生活における様々な可能性と、それを実現する手段との間には、これだけ巨大な開きが存在している。可能性が、単に可能性として止っているなら、やがてそれは可能性でさえなくなってしまう。何故なら、可能性というのは、その実現に努力献身し、その結実を確保する、という条件があって、はじめて人間生活の貴重な現実的モメントとなって来るからである。