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たにしのしゅっせ
むかし むかし あるところに
楠山 正雄
楠山正雄『むかし むかし あるところに』。同一底本的分册已合并为一书。收入:たにしの出世、浦島太郎、花咲かじじい。
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,919 字 · 29 页
そこは秋のけしきで花壇のなかには、黄ぎく、白ぎくが咲き乱れて、ぷんといいかおりを立てました。むこうを見ると、かっともえ立つようなもみじの林の奥に、白い霧がたちこめていて、しかのなく声がかなしくきこえました。
いちばんおしまいに、北の戸をおあけになりました。そこは冬のけしきで、野には散りのこった枯葉の上に、霜がきらきら光っていました。山から谷にかけて、雪がまっ白に降り埋んだなかから、柴をたくけむりがほそぼそとあがっていました。
浦島は何を見ても、おどろきあきれて、目ばかり見はっていました。そのうちだんだんぼうっとしてきて、お酒に酔った人のようになって、何もかもわすれてしまいました。
三
毎日おもしろい、めずらしいことが、それからそれとつづいて、あまりりゅう宮がたのしいので、なんということもおもわずに、うかうかあそんでくらすうち、三年の月日がたちました。
三年めの春になったとき、浦島はときどき、ひさしくわすれていたふるさとの夢を見るようになりました。春の日のぽかぽかあたっている水の江の浜べで、りょうしたちがげんきよく舟うたをうたいながら、網をひいたり舟をこいだりしているところを、まざまざと夢に見るようになりました。